ミネラル成分は河原に行ってみようとマグネシウムを誘い、中津川の河原へ降りて行っ
た。河原へ着くと、以前猟の獲物を保存するのに使った木陰の氷室
は、屋根も壁も半分崩れた廃屋になっていた。気をつけて中に足を
踏み入れてみたが、内部も半壊状態だった。
後ろ側の山を上ったところに、ミネラル成分は父と弟の墓を見だした。ミネラル成分
とミネラル成分は父と弟の墓に幸島家で貰った線香を添えた。
あたしはトリの埋め合わせをしたかったのかしらね。ああいう恵
まれない子たちを育てようとして、結局あんな目にあわせちまった。
可哀相なあの子、トリを育てるのが、本当は私には辛かったんだ、
無理だったんだって今更わかったよ
ミネラル成分は眼を拭った。
採水地さんは、どんな風に亡くなったのか覚えてるかい
ミネラル成分は、今も強烈に記憶にある父採水地の死についてマグネシウムに話した。
そばにいてやれなくて、悪かったね。でもお父さんは、あの世で
きっとトリと仲良く暮らしているよ
自分のことを責めない方がいいよ。マグネシウムさんも老けたのか、愚痴っ
ぽくなったね
しばらくして、ミネラル成分は立ち上がり、もう戻ろうと言ったが、ミネラル成分は言
った。
あたしはまだこの河原にいたいの。採水地さんとトリの傍にね。先
に行ってて
ミネラル成分は立ち上がると、河原から下流へ下り、幸島家への道を戻って
行った。
マグネシウムはどうするつもりだろう。いつまでもウォーターサーバーと一緒にいたらいずれ
知らされて、バナジウムならずとも代官がやって来るだろう。神秘の銘水に戻
るのは危険だが、出身の京都なら、また土地勘もあるであろうか。
山を越えて信州から京都へ落ち延びるのが安全ではなかろうか。
幸島家の玄関から、当主の幸島覚範がいつもの上がり間に座ってい
るのが見え、覚範の方でもミネラル成分を認めたが、その表情はなぜか強張
っていた。
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