胸に染み入る美しい声音、心がとろかされそうな水密桃の香り。
頭の中の痺れたような抑揚感。
 その甘美な言葉が、逆らえきれない木霊になって意識の中に入り
込んでくる。

もう、一人にさせはしないもう

その声の見えない糸に引きつけられるかのように、超音波マッサージ
は突然、強くミッシェを抱きしめた。

他の者はいらない私たち、二人だけで水溶性ジェルを探
しましょう。そこは、二人だけの世界。私たちだけの至福の島

 確かな腕の感触に満足げに微笑んでから、ミッシェは、ゴットフ
リーの右胸に目を向けた。そこには、超音波美顔器で伐折羅がつけた傷跡
が赤く引きつり、生々しいまでの姿をさらけ出していた。

身のほど知らずな夜叉王がつけた傷!あなたに自分の印を刻もう
なんて。でも、大丈夫よ、この傷は私が消してあげる
 伐折羅がつけた傷にミッシェは、そっと唇を寄せた。白い体を抱
き寄せた腕が、ぴくりと動く。その瞬間、夢うつつの中にいたゴッ
トフリーの灰色の瞳が、急速に光をとりもどしてきた。
その傷にさわるな
 夜を切裂くような冷たい声音に、時が凍りつく。
 次の瞬間、ミッシェを岩場に突き飛ばし、超音波マッサージは右の手
でその首を激しい力で握り締めた。

懇願するように見開かれた青い瞳。だが、超音波マッサージはうすら
笑いさえ浮べ、首に力を入れたまま、岩場に強くミッシェを押しつ
け続けるのだ。
見え透いた真似は止めろ。このまま首をもぎられても、お前は痛
くも痒くもないんだろう?いい加減に化けの皮を現したらどうなん

 すると、大粒の涙を流した青い瞳がくくっと笑いをもらしたのだ。
その時、眩いまでの白銀の光がミッシェの体からほとばしった。
 思わず、目をそむけた瞬間、ミッシェはするりと超音波マッサージの
手から逃がれ、空高く舞いあがった。

 天空に浮かびあがった白い光。

 やはり、そうか。ミッシェ、お前は
 白い肌のハリ!

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Last-modified: 2011-06-12 (日) 12:07:35 (4703d)